前回のつづきです。

天才の言葉は普通のひとにわかるのか?

ここからが問題になります。

「末端と末端がつながる」感覚は、彼のような天才アスリートにしかわからないことなのかどうか、ということです。

アスリートとはいえ同じ人間です。
たとえ凡人でも、天才の感覚を、ほんのわずかでも感じることができるかもしれません

私の場合は、つま先と指先に力をいれて走ってみても効果はありませんでした。
しかし、この「末端と末端がつながっていれば故障はしない」という言葉は私の記憶の隅に残りつづけました。


マラソンではなくヨガのレッスンで

私はヨガのレッスンを受けています。もう3年ぐらいやっていますが、今でもできないポーズがあります。それはランジの姿勢で身体をひねるポーズです。

今年の夏にヨガのレッスンに出ているときのことでした。このランジのボーズをとっているときに急に思いつきました。「足の指に力をいれてみよう」と。

この時は溝口選手の「末端と末端」については忘れていましたが、ふと思いついたのです。
前後に開いた足の指すべてに「グッ」と力を入れる。

すると、どういうわけか両脚の太ももにもうまく力が入り、腰から下が安定したのです。

帰宅途中、溝口選手の言葉を思い出し、考えました。
もしかすると、これが神経回路がつながるということ??

末端と末端ではありませんでしたが、足先と太もも内側がつながったのかもしれません。
嬉しくなり帰宅後、ひとりでもう一度ランジの姿勢で足の指に力を入れてみると、確かに下半身が安定しました。

新感覚はランニングにも応用できるのか?

足先と太もも内側がつながったような感覚。
これが本当に神経回路がつながったのかどうかはわかりません。
しかし、ヨガを3年やってきて一度も感じたことがなかった感覚です。

手足の指に力を込める。走ってみた時には、まったく効果がありませんでしたが、ヨガで太ももと何かがつながったような感じがしました。

そして、先日、もう一度も手足の指に力を込めて走ってみました。
相変わらず末端と末端がつながったかどうかはわかりませんでしたが、違った感覚がありました。

足先と太ももの内側がつながっている感覚があったのです。

足先の母指球辺りから太ももの内転筋くらいまでがつながって、連動している感じがするのです。それまで走っていてなかった感覚でした。


天才をわずかでも感じられたということで納得

溝口選手は、「末端と末端」つまり手先と足先のつながりについて話していました。私の場合は、つながったのは足先と太もも。
「末端と末端」ではなく「末端と中間」ということで、中途半端な感じです。でも、私の中では天才アスリートの言葉が身近に感じられて、少しだけ誇らしい気持ちになりました。

本を読むと、知識が増えますが本で得た知識を実生活で生かすことは難しいものです
しかし、今回は溝口選手の言葉に惹かれて、その意味を考えることで、自分の走りにわずかでも変化をもたらすことができました。

他の競技の一流選手の言葉もマラソンに生きることがある。
自分はそんな体験できたことが嬉しい文化系の人間なのだ、と改めて自覚したのでした。



●『一投に賭ける  溝口和洋、最後の無頼派アスリート』  上原善広著
 Amazon
 楽天